黷ノ荒れて忽《たちま》ち役人も三四人|打倒《うちたお》されました。一同|何《ど》うなることかと顔を見合せて居りましたが、追々|怪我人《けがにん》は増えますばかり、義気に富みたる文治は堪《こら》え兼て、突然《いきなり》一本の棒を携え、黒煙《くろけむり》の如き争闘の真只中《まったゞなか》に飛込んで大音《だいおん》を挙げ、
文「まア/\待て、何事かは知らぬが控えろ/\」
と仁王立《におうだち》に突立《つった》ちました。此の態《てい》を見るより先に立ちたる大《だい》の男が、
「やい、汝《わり》ゃア何者か、邪魔をしやアがると打殺《うちころ》すぞ」
死者狂いの四五十人が異口同音に、「それ畳《たゝ》め、殺せ」と犇《ひしめ》く勢《いきおい》凄《すさ》まじく、前後左右より文治に打ってかゝりました。
文「よし、拙者《せっしゃ》の止めるのを肯《き》かぬのか、さア来い」
と二打三打《ふたうちみうち》打合いましたが、予《かね》て一人でも打据《うちす》える気はございませぬ、受けつ流しつ数十人を相手に程よくあしらって居ります。「えゝ、こんな奴を相手に手間取るは無益だ」と一人の罪人は烈《はげ》しく打合う其
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