》ゃアそれが辛《つろ》うございますから」
國「やア森松、もう時間が切れるぞ、早く/\」
時に獄丁《ごくてい》の横目《よこめ》と申す者が、
「さア/\限りはねえ、早くしろ/\、長くなると為に成らねえぞ」
と一々囚人を集めて居ります中《うち》に、ブウ/\という法螺貝の音、
横「さア/\此奴《こいつ》らア何時《いつ》まで居やがるんだ」
と追々囚人を引立てゝ船に乗込まして居ります。
十三
見送って居ります國藏、森松の両人は
「旦那ア、旦那ア、御新造を始め後《あと》のこたア御心配なさいますな」
と男泣に泣出す途端に亥太郎が駈付けてまいりまして、
亥「森松、國藏、旦那は何処《どこ》に居るんだ」
國「あゝ亥太郎兄イか、旦那は彼処《あすこ》へ」
亥「ど、ど何処に」
森「もう船に乗っていらア」
亥「やア旦那、一寸《ちょっと》待って下せえ、遅かった」
役「これ/\控えろ、もう時間だ」
亥「時間も糸瓜《へちま》もあるものか、ぐず/\すると打殺《ぶちころ》してしまうぞ、誰だと思う、豊島町の亥太郎だぞ」
役「やアまた亥太郎めが来やがったな」
亥「やかましい、旦那、何
前へ
次へ
全222ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング