よ/\国中《こくちゅう》へ恥を曝《さら》さなければ成りますまい、只今お町殿へ明日《あす》のことを申上げ、お別れに只《たっ》た一目お逢いなされてはと申入れましたが、文治殿の平常《ふだん》の気象を御存じゆえ、此の場合未練がましく別れにまいったら、定めし叱られましょう、お目に懸りたいは山々なれども、じッと堪《こら》えてまいりますまいと、流石《さすが》は文治殿の御家内だけ……女ですら斯様《かよう》でありますのに、あなた方は只文治殿の事のみを思い、お心得違いをなさいましたなア、さア分りましたらお止《とゞま》りなさい、如何《いかゞ》でござるな」
 これを聞きました両人は頭を下げ、只|男泣《おとこなき》に歯ぎしりして口もきかれませぬ。
 喜「まだ御合点《ごがてん》なさいませんか」
 両人「それじゃア旦那にお目にかゝる事は出来ませぬか」
 喜「いゝえ、何《ど》うしてあなた方も明日《あした》は是非お見送りを願います、まさか私《わたくし》は役人でござるから、よし義の為にもせよ、一旦罪人と極《きま》って遠島申付けられた者に逢うことは出来ませぬ、是非ともあなた方はお出で下すって、私の申した事を文治殿へ宜しく申
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