」
亥「そんな事を知らねえで済みますものか、ねえ、いろ/\お前《めえ》さんのお骨折《ほねおり》で助かったこたア蔭ながら……なア國藏、お礼を申さねえ日は無《ね》えなア」
喜「それほど文治殿の助かった事を喜びながら、その文治殿に恥を掻かせる積りかな、それとも殺す気かな」
亥「こりゃア妙な事を仰しゃいますねえ、旦那を殺すの恥を掻かせるのとは何《なん》のことでござんす、此方《こち》とらア自分の命を棄てゝも旦那を助ける覚悟だ、又一旦思い込んだ事《こた》ア一寸《いっすん》も後《あと》へ退《ひ》かねえ此の亥太郎でござんすぜ」
喜「然《しか》らばお前さん方は其の恩人の文治殿を、明日《みょうにち》の遠島船《えんとうぶね》の出帆の場に切込み、同人を助け出して上州《じょうしゅう》あたりへ隠そうという積りでござろうな、それとも違いましたかね、何《ど》うでござりますな、さア其の文治殿は悪人でござるか、乃至《ないし》泥坊《どろぼう》でござるか」
亥「えッ旦那、妙なことを仰しゃいますね、誰が悪人と申しやした、泥坊なんぞ為《す》るような旦那で無《ね》えと云うことは誰でも知ってるじゃアござんせぬか」
喜「さ
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