ませんから、随分御機嫌よう、へえ左様なら、お暇《いとま》を……」
 亥「おい/\國藏待て、変なことを云うじゃねえか、己《おれ》も実は此方《こちら》へお暇に来たんだ、お前《めえ》は何処《どこ》へ往《い》くのだ」
 國「えゝ中々遠方でござんすまア当分お別れだ」
 亥「手前《てめえ》は明日万年橋へ……」
 と云いかけて暫《しばら》く四辺《あたり》を見廻し、
 「國藏、貴様も遣付《やっつ》ける積りか」
 國「棟梁、お前《めえ》も」
 亥「ウム、己も決心した」
 國「そんなら頼もしい」
 と眼と眼で示し合わして、
 両人「御新造様、御機嫌よう」
 町「まア/\お二人ともお待ちなさい、今|一言《いちごん》仰《おっし》ゃった万年橋というのは」
 二人「実は命を棄てましても」
 町「まアお二人とも」
 喜「こら/\お二人ともお控えなさい」
 二人「これは/\藤原様、お前《めえ》さんのお蔭様で旦那も命が助かりました、有難うござんした、さア直ぐお暇致しましょう」
 喜「まアお二人とも少しお待ちなさい、えゝ只今お二人がお蔭で旦那の命が助かりましたと仰しゃったが、その次第柄《しだいがら》は御存じで仰しゃったか
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