ませんでも、せめては……いや思い切りましょう、事に依《よ》ると生涯離縁するなどと……もう/\諦めましょう」
と云う声さえも涙でございます。
喜「それは御尤《ごもっとも》ですが、併し……はてな、何《ど》うしたら宜《よ》かろうか知らん」
と倶《とも》に涙に暮れて居りますと、表の方《ほう》に
「お頼み申します」
町「はい、何方《どなた》で……おや亥太郎さんでございますか、さアお上りなさいまし」
亥「えゝもう此処《こゝ》で宜《よろ》しゅうござります、御新造《ごしんぞ》様永々お世話になりましたが、明日《あした》私《わっち》やア遠方へまいります、また長《なげ》えことお目にかゝれません、へえ、ご、ご御機嫌よう、左様なら……」
町「あゝもし亥太郎さん、まアお待ちなさい」
亥「えゝ、もう」
町「まア/\少しお待ちなさい、お顔色もお悪い様子で、何か変事でもございますか」
亥「いゝえ別に」
また、表の方で、
「へえお頼み申します、國藏でございます」
亥「やア國藏か」
國「やア棟梁か、へえ御新造、御機嫌宜しゅうござんす、棟梁にも宜《い》い処でお目にかゝりました、まア当分お目にかゝれ
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