いまし、もし文治が遠島にでも……」
 喜「左様、これが愈々《いよ/\》明日《みょうにち》になりました」
 町「えッ、いよ/\……」
 喜「はい」
 と暫く二人は俯向《うつむ》いたまゝ思案に暮れて居りましたが、やがてお町は心を取直しまして、
 町「藤原様え、明日《みょうにち》は何時頃《いつごろ》出帆《しゅっぱん》いたすのでございましょう、たしか万年橋《まんねんばし》から船が出るとか承わりましたが左様でございますか」
 喜「左様、あなたも嘸《さぞ》御心配なすったでしょうが、明日こそはお目に懸れます、併《しか》し私《わたくし》はお役柄の御近習《ごきんじゅ》ゆえ、役目に対して残念ながらお目に懸ることが出来ませぬ、あなたはお名残《なごり》のためお出でなさいまし、御近所まで私が御案内いたしましょう」
 町「はい、何《ど》うも致し方がございません、一目《ひとめ》……えゝ、もう止しましょうよ」
 喜「そりゃまた何故《なぜ》ですか」
 町「何故って貴方《あなた》、叱られますもの」
 喜「あゝ成程日頃の御気性をよく御存じでございますな、併《しか》し是が一生の……」
 町「左様でございますね、会って話は出来
前へ 次へ
全222ページ中50ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング