の奴らが逃げるであろうと斯《こ》う思いまして、心中《しんちゅう》手順を定《さだ》め、塀より下り立ち、先ず庭に涼んで居りました村と婆を後《うしろ》へ引倒し、逃げられぬように手早く二人の足に一刀を切付け、それから縁側の両人を目がけて其の場に切伏せ、当の敵たる蟠龍軒は何処《いずく》にありやと間毎《まごと》々々を尋ねますと、目指す敵《かたき》の蟠龍軒は生憎《あいにく》不在と承知いたし、無念|遣《や》る方《かた》なく手向う門人二三を打懲《うちこ》らし、庭に残して置きました村と婆を切殺して其の儘帰宅致しました、このお村という奴は顔に似合わぬ毒婦にて、二世《にせ》を契った夫友之助を振捨てゝ、蟠龍軒と情《じょう》を通じて、友之助を亡《な》き者にせんと企《たく》みたる女でございます、いつぞや私を取って押え、痰《たん》まで吐きかけた恩知らず、私の遺恨とは申しながら、今に残念に思うて居ります」
 と、一点の澱《よど》みもなく滔々《とう/\》と申立てました。

  十

 時に石川土佐守殿、
 「其の方の心底《しんてい》はよう相分ったが、左様の義侠心を持ちながら何故其の場を逃退《にげの》きしぞ」
 文「恐れな
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