して申訳なく、二つには彼《あ》のような悪漢を生け置く時は、此の後《のち》どのようなる悪事を仕出来《しでか》すかも知れぬ、さぞ町人方が難渋するであろうと思いますと、矢も楯《たて》も堪《たま》らず、彼等の命を絶って世間の難儀を救うに若《し》かずと決心いたし、去《さん》ぬる十五日の夜《よ》、御法度《ごはっと》をも顧《かえりみ》ず、蟠龍軒の屋敷へ踏込《ふんご》み、数人の者を殺害《せつがい》いたし候段重々恐入り奉ります」
奉「蟠龍軒が悪人ならば上《かみ》に於て成敗いたす、悪人だから切殺したと申すは言訳にはならぬぞ」
文「恐入ります、言訳にならぬは承知の上、如何様《いかよう》とも御処分を願います」
奉「其の夜《よ》如何《いかゞ》致して忍び込み、如何《いか》にして殺害いたしたか、詳しゅう申立てえ」
文「其の夜の丑刻《こゝのつ》頃庭口の塀《へい》に飛上《とびあが》り、内庭の様子を窺《うかゞ》いますると、夏の夜とてまだ寝もやらず、庭の縁台には村と婆《ばゞ》の両人、縁側には舎弟の蟠作と安兵衞の両人、蚊遣《かやり》の下《もと》に碁を打って居りました、よって私は突然《いきなり》女ども両人を切らば、二人
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