ょうしょ》に於《おい》て再吟味|仰付《おおせつ》くる」という御沙汰になりました。この評定所と申しますのは、竜《たつ》の口の壕《ほり》に沿うて海鼠壁《なまこかべ》になって居《お》る処でございますが、普通のお屋敷と格別の違いはありませぬ。これは天下の評定所でございますから、御老中は勿論将軍家も年に二度ぐらいはお成《なり》になるという定例《じょうれい》でございます、即《すなわ》ち正面の高座敷《たかざしき》が将軍家の御座所でございまして、御老中、若年寄《わかどしより》、寺社奉行、大目附《おおめつけ》、御勘定《ごかんじょう》奉行、郡《こおり》奉行、御代官並びに手代《てだい》其の外与力に至るまで、それ/″\席を設けてあります。業平文治が数人の者を殺しながら、評定所に於て再吟味になると云うのは全く義侠の徳でございます。

  九

 月番御老中を始め諸役人一同列座の上、町奉行石川土佐守殿がお係でございまして、文治を評定所へ呼込めという。
 同心「当時浪人浪島文治郎、這入りましょう」
 と白洲の戸を明けて、当人の這入るを合図に又大きな錠を卸《おろ》しました。文治は砂上に畏《かしこ》まって居りますと、町
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