事によるとお増供《ましども》と申して一二人余計連れてまいる事もございます。其の昔、駕籠訴をいたします者は何《いず》れも身軽に出立《いでた》ちまして、お駕籠脇の隙《すき》を窺《うかゞ》い、右の手に願書を捧げ、左手《ゆんで》でお駕籠に縋《すが》るのでございますから、時に依ると簾を突破《つきやぶ》ることがございます。大概お簾先が取押えて、押えの者を呼んで引渡してしまいますが、屋敷へ帰りましてから其の書面は封の儘に焼棄《やきす》て、当人は町人百姓なれば町奉行へ引渡すのでありますが、実は願書は中を入替えて焼棄るのでございますから、御老中へ駕籠訴をするのが一番|利目《きゝめ》があったそうでございます。右京殿が御下城の折に駕籠訴を致しましたのは、料理店立花屋源太郎でございます。さて源太郎は隙を覘《うかゞ》って右手《めて》に願書を捧げ、
源「お願いでござい、お願いでござい」
と呼《よば》わりながらお駕籠の簾に飛付きました。
供「それ乱心者が、願いの筋あらば順序を経て来い」
と寄ってたかって源太郎を取押え、押えの侍に引渡してしまいました。右京殿は御帰邸の後《のち》、内々《ない/\》その願書を御覧
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