ニ申し聞けまして、お町に向い、
 文「さアお町、十分に止《とゞ》めを刺せ」
 町「はい、大伴、親の敵思い知れッ」
 とずぶりと突き通されて息は絶えました。見物一同、山の崩れる如くわッ/\という人声《ひとごえ》、文治は取急ぎ血刀《ちがたな》を拭い、お町に支度を改めさせて与力に向い、
 文「いずれお役人様が御出役《ごしゅつやく》になりましょうが、市中を騒がし御法を犯せし我ら夫婦、お縄を頂戴いたします」
 と大小を投出しました。
 与力「いや御浪士、縄には及ばぬ、併《しか》し大小はお預かり申す、ゆる/\お支度なさい」
 文「有難う存じます、お町支度は宜《よ》いか」
 同心「大分お疲れの様子、こゝに薬が有りますが、同役、水を」
 文「何から何までお手数《てすう》をかけまして恐入ります、私《わたくし》は気付には及びませぬ」
 法は法、抂《ま》げる訳になりませぬから、文治お町の両人を駕籠に乗せて奉行所へ引立《ひった》てました。花時の向島、敵討があると云うので土手の上は浪を打ちますよう、どや/\押掛けてまいりまして、蟠龍軒の死骸を見ては唾《つば》を吐くやら蹴飛《けと》ばすやら弥次馬連が大騒ぎをして居
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