蛯フ差添、然《しか》らずと云うならば出して見せえ、小野の娘お町は今は斯《か》く申す文治の妻なり、お町/\、これへ参れ」
 と云われて大伴蟠龍軒は顔色《がんしょく》土の如く、ぶる/\震えて居りまする。

  四十五

 お町は敵討の支度かい/″\しく現われ出で、
 町「おのれ蟠龍軒、眼さえも見えぬ父上様を、よくも欺《だま》して引出し、無慚《むざん》にも切殺したなア、さア汝《おのれ》も武士の端くれ、名告《なの》って尋常に勝負せい、さア/\悪党、いかに/\」
 時に友之助、
 友「やい蟠龍め、この煙草入は覚えが有ろう、この友之助が其方《そち》へ売った煙草入、お茶の水の人殺しの時、亥太郎さんに取られたであろう、さア何《ど》うじゃ、えゝ、この意気地無《いくじな》しめが」
 いかに卑怯な蟠龍軒でも、もう斯《こ》うなっては逃げる訳に参りませぬ。
 蟠「ウーム、かく申す大伴の道場へ夜中《やちゅう》切込んで、泥坊同様なことをしたのは其の方どもだな、よし、片ッ端から切伏せくれん、さア支度いたせ」
 と言いながら四辺《あたり》を見ますると人一ぱい。國藏、森松、亥太郎始め、皆々手に/\獲物を携《たずさ》え、中
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