ナござりますか」
文「縁頭《ふちかしら》は赤銅魚子《しゃくどうなゝこ》、金にて三羽の千鳥、目貫《めぬき》は後藤宗乘の作、鍔《つば》は伏見の金家の作であります」
喜「承知いたしました、様子に依《よ》ったら御主人へ申上げて置きましょう」
文「いや、それは余り大業《おおぎょう》です、時の御老役のお耳に入れるまでの事はございません」
喜「併《しか》し御前へ上《あが》りますと折々文治は何方《どちら》に居《お》るのであろうというお尋ねがござりますゆえ」
文「いつに変らぬお情、切腹を御免になり、又流罪を御赦免下さいましたのも、皆|其許《そこもと》のお執成《とりなし》と右京殿の御仁心《ごじんしん》による事、文治は神仏より尊《とうと》く思うて居ります」
喜「いや、それと申すも、其許の日頃の行状が宜《よ》ければこそ、我らは真に世の中の鑑《かゞみ》と信じて居ります、時に御家内様、敵《かたき》の行方が知れまして嘸々《さぞ/\》お悦びでござりましょう」
と一通りの挨拶をして、大分|夜《よ》も更けましたゆえ藤原喜代之助は暇《いとま》を告げて、一先《ひとま》ず我家へ帰りました。
四十四
喜代
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