@亥「へえ、それは/\」
文「一両日中に此の近辺で対面致します」
亥「あの蟠龍軒に、そいつア有難え、野郎め、其の時こそなぶり殺《ころ》しに」
文「それでござる、其の時お助太刀《すけだち》は誓って御無用でござりますぞ」
亥「やッ、それ計《ばか》りは旦那聞かれません、今まで彼奴《あいつ》の為に何《ど》の位《くれえ》苦労をしたか知れやしねえ」
文「いやさ、其処《そこ》がお頼みだ、武士の敵討に他人の力を借りたとあっては後世の物笑いになります、今まで文治が苦労をした甲斐がありません、さア此の道理を聞分けて、御心情はお察し申すが必らず助太刀して下さるな」
亥「へえ/\分りやした、そんなら宜《よ》うござんす、併《しか》し唯《たゞ》見ているだけなら宜うござんしょう」
文「それは御勝手、成るべく遠くへ離れて御覧下さい」
亥「併し先方に助太刀があれば」
文「いや、それも御無用」
亥「それじゃア旦那|余《あんま》りじゃアねえか」
文「はい、痩《やせ》ても枯れても文治は侍でござります」
亥「そりゃア云わずと分って居ます、それじゃア皆《みんな》に断らずばなるまい」
文「どうぞ宜しく頼む
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