l、あなたは何を仰しゃるのでございます、私《わたくし》はそんな浮気なことで参ったのじゃア有りません、ちょっとお目に懸って大事な事を」
 主「大事な事とは何事で」
 女「まア取次いで下さいまし」
 主「えゝ旦那様、島から女が来ました」
 文[#「文」は底本では「女」と誤記]「はてな、無人島《むにんとう》から来る訳はないから定めし三宅島でありましょう、何方《どなた》か知らんがお通し下さい」
 女「これは/\旦那様、暫く」
 文「さア此方《こちら》へ、何《ど》うも見覚えはございませんが何方でございましたろう」
 女「はい、お忘れは御尤《ごもっとも》でございます、私《わたくし》は三宅島に居りまして、いろ/\お世話どころではございません、一命をお助け下さいました八丁堀阿部忠五郎の娘お瀧でございます」
 文「やアお瀧さんでしたか、まるで見違いました、赦免の後《のち》は此の辺へまいって居《お》るのですか」
 女「はい、向島の權三郎というお家《うち》に下女奉公を致して居ります、旦那様が島においでの時分、折々お話のございました大伴蟠龍軒」
 文「えッ」
 女「その大伴がまいりました」
 文「えッ、そゝそ
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