の忰《せがれ》でございまして、故《ゆえ》あって父文吾の代より浪人となり、久しく本所《ほんじょ》業平橋《なりひらばし》に住居《すまい》いたして居りましたが、浪人でこそあれ町地面《まちじめん》屋敷等もありまして、相応の暮しをして居りました。で、業平橋に住居して居りました処から業平文治といいますか、乃至《ないし》浪島を誤って業平と申しましたか、但《たゞ》しは男の好《よ》いところから斯《か》く綽名《あだな》いたしたものかは確《しか》と分りませぬ。併《しか》し天性弱きを助け強きを挫《ひし》ぐの資性に富み、善人と見れば身代《しんだい》は申すに及ばず、一命《いちめい》を擲《なげう》ってもこれを助け、また悪人と認むれば聊《いさゝ》か容赦なく飛蒐《とびかゝ》って殴り殺すという七|人力《にんりき》の侠客《きょうかく》でございます。平生《へいぜい》荒々しき事ばかり致しますので、母親も見兼て度々《たび/\》意見を加えましたが、強情なる文治は一向|肯入《きゝい》れませぬ。情深《なさけぶか》き母親も終《つい》には呆れ返って、「これほど意見しても肯かぬ気性の其方《そち》、行《ゆ》く/\は親の首へ縄を掛けるに相違ない
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