オや旦那ではないかと様子を聞きやしたところが、確かに大伴蟠龍軒、どうか旦那方を捜してお知らせ申したいと思っている内に、その手柄か何か知らねえが、江戸においでなさる御領主様がお抱《かゝ》えになるとか云う事で、先月末に蟠龍軒めは江戸を指して出立しやした」
 文「それは宜《よ》い事を聞いた、それにしてもお前は何《ど》うして此処《こゝ》へ」
 國「さア、その御不審は御尤《ごもっとも》ですが、越後にいる時分この山中に迷っている美人があると云うことを風の便りに聞きましたから、江戸に帰る途中、もしやと思って昨日《きのう》から捜した甲斐あって、此処でお二人にお目に懸るとは神様のお手引でござんしょう、私《わっち》アこんな嬉しい事はござりやせん」
 文「あゝ、つい話に紛れて忘れて居ったが、お前は何《ど》うして蟠龍軒の顔を知って居《お》るか」
 國「私《わっち》ア一向存じやせんが、女房《にょうぼ》のお浪《なみ》が浅草の茶屋にいる頃から宜《よ》く知って居りまして」
 文「左様か、お前は女房まで連れて私《わし》の跡を慕って来たのか」
 國「へえ、ところが今いう通り、越後で病気に罹《かゝ》りやしたが、私《わっち》
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