トんぴ》に消ゆる日向《ひなた》の雪同前、胸も晴々《はれ/″\》したわい、おゝ斯様《こん》な悦ばしい事は……」
 と鬼を欺《あざむ》く文治もそゞろに愛憐《あいれん》の涙に暮れて、お町を抱《かゝ》えたまゝ暫く立竦《たちすく》んで居りまする。お町は漸《ようや》く気も落着いたと見えまして、
 町「旦那様、私《わたくし》は……」
 文「もう宜《い》い、もう宜い、何も云うてくれるな、敵《かたき》の手掛りも薄々知れて居《お》るゆえ、今に満足させるぞよ」
 町「はい、旦那様、あの蟠龍軒めは……」
 文「よし/\、左様に心配してくれるな、おゝ悦ばしい」
 とお町の手を取って小屋の内に一休み、言わず語らず涙にくれている、互いの心の中《うち》は思いやられて不憫《ふびん》でござりまする。

  四十一

 文治夫婦は深山《みやま》の小屋にて、島に一年|蟄居《ちっきょ》の話、穴に一年難儀の話、積る話に実が入《い》りまして、思わず秋の夜長を語り明しました。
 文「もう夜《よ》が明けたの」
 町「おや、もう夜が明けたのですか」
 と云って居りますところへ一人の男がやってまいりまして、
 「やア旦那様」
 文「おゝ、
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