ウって」
文「今更そんな事を云っても追付《おっつ》かない」
主「その二人は何《ど》うしやした」
文「天罰は恐ろしいもので到頭船の中で死にました」
主「旦那様がお殺しなすったのでやすかえ」
文「いや左様ではない、彼ら二人は毒を喰って死にました」
主「へゝえ成程、因果ちゅうものは恐ろしいもんでやすなア」
文「御主人、話は変るが、この貼付《はりつけ》の中《うち》にある短冊《たんざく》は何者の筆蹟でござるな」
主「へえ、こりゃ熊女が書きやした」
文「その熊女と申すのは誰でござるな」
主「何《なん》だか知りましねえが、信州の山の中で熊に助けられたとかいう女でござりやす」
文「はてな、この歌といい筆蹟といい好《よ》く似た者もあるものだな」
と暫く首を拈《ひね》って居りましたが、
文「こりゃア正《まさ》しくお町の筆蹟に相違ない……この女はまだ生きて居りますか」
主「生きて居《お》るにも何も此の通り字を書きます」
文「何処《どこ》に此の女は居りますか」
主「此の間まで二居峠、中の峰の寺に居りやしたそうで、これを其の先頃《せんころ》当所で海賊を退治しやした江戸の剣術の先生
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