ェ聞付けやしてな、美人だてえので態々《わざ/\》逢いに往《い》きやしたところが、その熊女が逃出したそうで、けれども先生だから免《ゆる》さねえ、山の中へ追ッ掛けてまいりやすと、何処《どこ》を何《ど》う嗅付けたか、大きな熊がむく/\と出て来やして、先生様の腕を押えておっぽり出しやした、それきりさア、誰もその熊が怖《おっ》かねえッて其の山へ往《ゆ》く者《もな》アありやせんよ」
 と伝聞の儘を物語りました。

  四十

 文「御亭主、それは何時頃《いつごろ》の事ですか」
 主「なアに直《じき》先月のことでありやす」
 文「左様か、どうも有難い、就《つい》ては御亭主|中食《ちゅうじき》の用意をして下さい、今から夜へ掛け、その二居峠中の峰まで往《ゆ》かにゃアならぬ」
 主「へえ、あなたも熊女に逢いたいのでがすかえ、兎角剣術の先生は熊女が好きと見えますな」
 文「そんな事は何《ど》うでも宜《よ》い、早く中食を」
 主「今から何うでも往《い》かっしゃるか、十里べえありやすぜ」
 文「次第に依《よ》っては一晩ぐらい途中へ泊っても苦しゅうない」
 主「さア駄目でがす、雨え降ってまいりやした」
 文「ウー
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