ゥたじけ》のう存じます」
 船「お前《めえ》らが連《つれ》の死んだ人ア何《ど》うすべえ」
 文「ほんに心付かなかった、只今まで船の中で死んだ者は何ういう扱いを致すものでしょう」
 船「陸《おか》が近けりゃア伝馬《てんま》へ積んで陸へ埋《うめ》るだが、何処《どこ》だか知んねえ海中じゃア石ウ付けて海へ打投《ぶっぽ》り込むだ」
 文「左様ですか、永く置いては船の汚《けが》れ、此の儘|何《ど》うぞ」
 船「おゝ合点《がってん》だ、客人|成仏《じょうぶつ》さっせえ、それ/\江戸の客人危ねえぞ」
 文「はい、有難う存じます、南無阿弥陀仏/\」
 さて文治は船頭の介抱にて身体も以前に復し、それ/″\金を出して礼をいたし、日を経て無事に新潟沖へ着船いたしまして、伝馬で陸《おか》へ上《あが》り、一同無事を祝して別れを告げました。これより文治は彼方《あなた》此方《こなた》と尋ね廻りまして、漸《ようや》く此の前泊りました旅籠屋《はたごや》へまいりました。
 文「はい、御免下さい」
 女「入っしゃいまし」
 文「一昨年中はいろ/\お世話になりました」
 と云われて主人は暫く文治の顔を見詰めて居りましたが、漸く
前へ 次へ
全222ページ中187ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング