ワす。
町「おゝ、そちは何時《いつ》ぞやの熊であったか、先程は宜《よ》う加勢をしてくれやった、其方《そち》と私と何《ど》ういう因縁か知らぬが、去年《こぞ》の冬から我身を助け、今又|此処《こゝ》に来合わして、既《すんで》のこと辱《はずか》しめを受けようとする危急を救うてくれるとは辱《かたじ》けない、有難い、よう聞分けてくれよ、かく申す私は親の代から浪人の身とは云いながら、武士の娘で武士へ縁付き、夫の出世大事と身を粉《こ》に砕きて辛労《しんろう》の甲斐もなく、又我が夫とても数多《あまた》の人を助けた事こそあれ、塵《ちり》ほども我が心に愧《は》ずるような行いをした事はない、それに如何《いか》なる因果の廻《めぐ》り合せか、重ね/″\の不幸続き、いよ/\今日という今日は死なねばならぬ事に成り果てました、今までの恩誼《おんぎ》はたとえ彼《あ》の世へ往《ゆ》こうとも決して/\忘れはせぬ、此の上は其方《そち》も山奥へ帰り、くれ/″\も用心して猟人《かりゅうど》や無法者に出会わぬよう、無事で達者で長生《ながいき》してくれよ、思えば/\、人間を助けるほどの情深きお前をば、何故《なぜ》天は人にしなんだか、
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