イざいますか」
と首を傾けました。
三十七
紋左衞門は一服吸って煙草盆を叩きながら、
紋「その剣術の先生様がな、お前様《めえさま》の字イ書くのを見て、此の女ア只者《たゞもの》じゃア無《ね》えちゅうて、わざ/″\越後からお前様に会いにござらしって、私《わし》が家《うち》にいるだ、悪い事アあんめえから、ちょッくら私が家へござらっしゃい」
お町は暫く考えて居りましたが、
町「えゝ其の先生と申すのは、まったく江戸のお方でございますか」
紋「言葉の様子では全く江戸のお方に相違ねえだ」
時にお町は、
「その剣術の先生というのは若《も》しや蟠龍軒ではないか知らん、まこと蟠龍軒にしたところが、夫の誡《いまし》めもあるゆえ我身一人で手出しはならぬ、また蟠龍軒にあらずとも、江戸のお侍に此の今の姿を見られるのも心苦しい」
と思いまして、
町「はい、あなたの御親切はまことに辱《かたじけ》のうございますが、零落《おちぶ》れ果てたる此の姿、誰方《どなた》かは存じませぬが、江戸のお侍に会いますのは心苦しゅうございます、何卒《どうぞ》お断り下さいまし」
紋「いや、それは宜《よ》くあんめえ
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