「ました、さア何《ど》うか此方《こちら》へお通り下さいまし」
 名「夕方《ゆうかた》、人の家《うち》へ来るでもねえが、急用あってめえりました」
 町「急用とは何事でございましょう」
 紋「先ず話をしねえば分らねえだ、此の間中新潟の沖に親船が居りやしたが、それが海賊だという事でな、その船の側に来る船は矢鱈に鉄砲を撃掛けたり、新潟あたりの旅人を欺《だま》しちゃア親船に連れだって、素《す》ッ裸体《ぱだか》に剥ぎ取って、海に投《ほう》り込むてえ話だ、さア御領主様も容易ならねえ海賊だてえんで、御人数《ごにんず》を出しても、海の中から飛道具で手向いするもんだに依《よ》って、何《ど》うにも手に負えねえてんだ、そこで御領主様から誰か船の中へ忍び込んで討取る者へは褒美を出すてえ触《ふれ》が出ただ、すると此の頃江戸から武者修行だと云って来ていた二人の侍が、その親船へ乗込んで海賊の親方を叩ッ切って、船へ火イ掛けやして、泥坊を根絶《ねだや》しにしただ、何と強《つえ》え侍じゃねえか、大層お役所から御褒美を貰ったそうだが、その剣術の先生が今日わざ/\己《おら》ア処へやって来ただ」
 町「へえ、江戸表の剣術の先生で
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