Aたとえ昔は何様《どん》な身分だっても今は今じゃねえか、海賊を退治して御領主様から莫大《ばくだい》の御褒美を頂きなすった位の大先生だ、会って悪いこともあんめえから、会うが宜《よ》いじゃねえか、事に依《よ》って金でも呉れさしったら、その金で路用も出来るてえもんだ、二つにはまた我《わ》が亭主の居所も知れるかも知れねえだ、そんな因業《いんごう》なことを云わねえで、私《わし》と一緒に往《い》かっせえ」
 町「いゝえ、思召《おぼしめし》は有難う存じますが、お断り申します」
 紋「まア然《そ》う云わねえでござらっしゃい」
 町「此の儀ばかりは何《ど》うぞお免《ゆる》し下さいまし」
 と押問答して居りますると、表の方《ほう》にて大伴蟠龍軒|外《ほか》二人《ににん》が、
 「えゝ、そんな事であろうと思って、表に立って聞いていた、御免よ」
 と押取刀《おっとりがたな》で入ってまいりました。お町は素《もと》より顔を知らぬものですから、蟠龍軒とは心付かず、
 町「いゝえ、お恥かしゅうござんす」
 と裏口から逃出しました。
 大「それッ」
 と云うより早く、遠見《とおみ》に張って居りました門弟|一人《いちにん
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