E衞門、なぜ其の女を連れて来ねえか」
喜「己《おれ》はア連れて来《く》べえと思っただが、出し抜けに連れて来てほざかれると詰らねえだから、連れて来《き》ねえだ」
これからお町を同道致しまして名主の宅へ連れてまいりますると、
名「さア此方《こちら》へお上りなせえ、さぞ難儀しなすったんべえ」
町「これは御丁寧な御挨拶で恐入ります」
喜「ひやアこれ女子《おなご》、こりゃ此の村の名主の紋左衞門《もんざえもん》様で、よく頼まっしゃい」
町「有難うございます」
紋「お前《めえ》らが熊女《くまおんな》先生でがすかねえ、何処《どこ》の者にしろ、金がねえば仕様がねえで、村でも何《ど》うかしべえから心配《しんぺえ》しねえで居《お》るが宜《い》いだ、此の村の奥へ十丁べえ参《めえ》りやすと寺があるだ、此の頃尼が死《しに》やして子供らア字イ書くことがなんねえで、手におえねえが、淋しかんべえが旅金《たびがね》の出来るまで子供らに字イ書くことを教《おせ》えてくんろ」
町「御親切に有難うございますが、人さまに字を教えるなどという手前ではございません」
紋「そうでねえ、この界隈《かいわい》にお前《めえ》
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