スり》は顔をしかめて居ります。

  三十六

 猟人《かりゅうど》二人が案じて居りますところへ、見馴れぬ女が尋ねてまいりまして、
 女「はい、御免下さいまし」
 一人の猟人は消魂《けたゝま》しく、
 猟「やアあの化物がやって来た」
 喜「馬鹿野郎、そんなに騒ぐもんじゃア無《ね》え」
 流石《さすが》に猟師の親方だけあって落着いたもの。言葉静かに、
 喜「一体お前様《めえさん》は何《なん》でがすえ」
 女「はい、私は仔細あって昨年|夫婦連《ふうふづれ》にて旅行の途中、二三里あとの山中にて山賊に逢いまして、連合《つれあい》の者は行方知れず、私は二人の山賊に追われます途端、幸か不幸か、思いがけなく熊の穴へ落ちまして、其の熊に囓み殺されることかと思いの外《ほか》、却《かえ》って熊のために助けられまして、今まで命を存《ながら》えて居りました、不憫《ふびん》と思召して何《ど》うぞお助け下さいまし」
 喜「何しろ怖《おっ》かねえ姿《なり》だなア、化物じゃアあるめえなア」
 女「決して怪しい者ではござりません」
 喜「はア、そんじゃアお前《めえ》は何処《どこ》の国の者で、名ア何《なん》ちゅうのか其処
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