ったと云うことだから、こいつア必定《てっきり》お百度だろうと後《あと》から往こうか知らんと思ったが、家《うち》が無人《ぶにん》で困っているのに何《なん》ぼ信心だからと云って、出先から成田へ往ったら又旦那に叱られるだろうと、こう思って止したのが結句幸いであった、今も國藏|兄《あにい》が成田様の一件で小言まじりに一本やられたところだ」
亥「己《おら》アな、昨夜《ゆうべ》の内にお百度を済まして、何《ど》うやら気が急《せ》かれるから、今朝|早立《はやだち》にして、十八里の道を急ぎ急いでもう些《ちっ》と早くと思ったが、生憎《あいにく》の大雨で道も捗取《はかど》らず、到頭《とうとう》夜半《よなか》になっちまった、あゝ何うも胸がドキ/\して気が落着かねえ、水を一杯《いっぺえ》くれねえか」
森「おゝ気の付かねえ事をした」
文「やア亥太郎殿か、成田へお出で下すったそうで、母のために毎《いつ》も変らぬ御親切、千万辱けのう存じます、母も只《たっ》た今往生いたしました、さア何《ど》うか直《す》ぐに奥へ往って見てやって下さい」
亥「えゝ皆様御免なせえ、えゝお母様《ふくろさま》、なぜ私《わっち》が……旦那
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