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 と後《あと》は涙に物云わせ、暫《しば》し文治の顔を見詰めて居りますと、文治も堪《こら》え兼て熱い涙を流しながら、お町の手を握って引寄せますると、足もとから長さ三尺にも余ります蛇《くちなわ》がのたりを打ってずる/\/\。お町は驚いて、「あれッ」と夫に凭《もた》れかゝりますと、
 文「町や、こんな事は毎日の事じゃ、何《ど》うも致しはせぬ、お町々々」
 と呼べども答えはございませぬ。文治は眼をこすりながら、
 文「えゝ、また夢か、馬鹿々々しい」
 総身の汗を拭いまして、
 文「もう夜《よ》が明けたのか、誠や聖人に夢なしとか、心の清らかなる人に夢のあるべき筈はない、我は夜《よる》となく昼となく夢現《ゆめうつゝ》に心を痛め、さながら五臓を掻きむしらるゝの思い、武士の家に生れながら腑甲斐《ふがい》なし」
 と我と我が心に愧《は》じて、焚火の辺《ほとり》にてほッと息を吐《つ》く折しもあれ、怪しや弦音《げんおん》高く一枝《いっし》の征矢は羽呻《はうな》りをなして、文治が顔のあたりを掠《かす》めて、向うの立木《たちき》に刺さりました。
 文「やア今の夢といい、また矢の飛び来《きた》りしは此の身の助
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