イいて見ますと、最早竹の性《しょう》は脱《ぬ》けて枯枝同然、三四年も前から雨曝《あまざら》しになっていたものと見えて、ぽき/\と折れまする。文治は窃《そ》ッとこれを抜取りまして、
 文「チエ…有難や、これこそ確かに人の造りし征矢、案に違《たが》わず此の島は折々|四辺《あたり》の島人《しまびと》の訪い来る島に相違ない、たとい其の島人が鬼であろうが蛇《じゃ》であろうが、事を分けて話したら、よもや頼みにならぬ事もあるまじ、やれ嬉しや、やッ……それ/\、今達者でおれと口真似をしたのは其の島人にはあらざるか、但《たゞ》し心の迷いかは知らぬが、かゝる矢種《やだね》のあるからには、何時《いつ》しか人の来るに相違ない、あゝ有難い/\」
 また木蔭に声ありて、
 「あゝ有難い/\」
 文「いや、今のは確かに……」
 と四辺《あたり》を見ますと、一羽の鸚鵡《おうむ》がつくねんと樹の叉《また》に蹲《うずく》まって居りまする。文治は心中に、「さては鸚鵡でありしか」と我ながら可笑《おか》しさに耐えず、
 文「達者で居れ」
 鸚「達者で居れ」
 文「馬鹿野郎」
 鸚「馬鹿野郎」
 なか/\よく人の真似を致します。

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