「し》を拾うて脇差の柄《つか》に打付け、袂《たもと》にあり合う綿に火を移し、枯枝にその火を掛けて焚火《たきび》をなし、また樹《き》の枝を折って樹から樹を柱に、屋根をこしらえて雨露《あめつゆ》を凌《しの》ぐの棲家《すみか》となし、先ず其の日暮しの用意は出来ました。
 文「これで先ず露命を繋《つな》ぐ趣向が出来たというもの、此の上は一日《いちじつ》も早く此の島を脱《ぬ》け出《い》でて、再び蟠龍軒に廻《めぐ》り合い、武士の嗜《たしな》み思う存分に敵《かたき》を討たなければならぬ、あゝ/\我は斯《か》かる無人の島に漂うて辛うじて命を継《つな》ぎ居《お》るに、仇《あだ》は日々夜々《ひゞよゝ》に歓楽を極めて居《お》ることであろう、實《げ》に浮世とは申しながら、天はさま/″\に人を操《あやつ》るものかな、蟠龍軒よ、此の方《ほう》が再び廻り合うまでは達者で居れよ、我妻《わがつま》もまた此の世に居らば何《ど》うぞ無事で居てくれよ」
 と心の中《うち》に祈らぬ日とてはござりませぬ。別に話し相手というもなく、只《た》だ船を繕《つくろ》うことにのみ屈托《くったく》して居りまする。折々《おり/\》木を切り魚《う
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