轤ク、世のため人のため、天に代って誅戮《ちゅうりく》を加えたるに過ぎざれど、其の職其の身にもあらぬため却《かえ》って罪となりつるか、かゝる無人島に彷徨《うろつ》いて徒《いたず》らに乾殺され、後世人の笑いを受けるより、寧《いっ》そ此の場に切腹して潔《いさぎよ》く相果て申さん」
と覚悟いたしましたが、また思い直して、
文「いや、見す/\蟠龍軒|似寄《により》の者が、新潟の沖なる親船に忍んで居《お》ると聞きながら、武士と生れて一太刀《ひとたち》怨《うら》みもせず、此の儘死ぬるも残念至極、また女房とても生死の程も分らぬ中《うち》に、空しく無人島の鬼と化したる其の後《のち》に、それと知ったなら嘸《さぞ》かし我身を恨むであろう、さぞや蟠龍軒が笑うであろう、こりゃ土を喰っても死なれぬわい、よし/\二人の舟子《ふなこ》の衣類を剥《は》いで、船の修覆《しゅふく》の材料となし、獣類魚類さては木の実を捜して命を繋《つな》ぐ工夫が肝腎《かんじん》、ウム、向うに見えるは鳥なるべし」
とやおら身を起して腕に覚えの一礫《ひとつぶて》、見事に中《あた》って白鳥一羽|撃留《うちと》めました。やれ嬉しやと切石《きり
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