一人の猟人《かりゅうど》は他《ほか》の猟人に向いまして、
甲「おい、あの女め、熊に抱付いたぞ、ありゃア只者《たゞもの》じゃアあるめえ、魔法使か化物だろう、いっそ人ぐるみ撃殺してしまおうじゃアねえか」
と鉄砲を向けますと、
乙「これ/\人間を撃つと又名主殿へ呼付けられて酷《ひど》い目に遇《あ》うぞ、まア待て/\」
甲「それもそうだな、やい女郎《めろう》め、其の熊ア汝《われ》え縛って引いて来いやア」
乙「おい/\そんな無理な事を云うなってば……女郎に熊ア連れて来られるもんか、何か仔細があるに違《ちげ》えねえだ、汝《わりゃ》ア此処《こゝ》に只鉄砲を向けて見張っているが宜《よ》い、己《おら》ア名主殿へ往って話して来《く》べえ」
甲「そんなら早く往って来いよ、これ女郎、その熊ア逃がすと汝《われ》え撃つぞ」
と暫く山と山、谷を隔《へだ》てゝ睨《にら》み合って居りました。
町「それ見なさい、お前は今更逃げる事も出来ない、あの猟人が万一お前を撃つならば、私も共に命を棄てましょう、必ず/\お前ばかり撃たせはせぬ、世にまします神々よ、たとい獣類なればとて、命を助けし大恩あるもの何《ど》
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