nめの内は心付きませぬが、
 町「はて是れは、熊が私の脊に取付けというのか知らん」
 と恐々《こわ/″\》熊の脊中を撫でて見ますと、いかにも温順《おとな》しくジッとして居りますから、思い切って熊の脊中へ確《しっ》かり取付き、一生懸命神々を念じながら目を瞑《ねむ》って居りますと、件《くだん》の熊は一飛びで穴の入口へ飛上りました。お町はホッと一息、四辺《あたり》を見れば谷間々々に少しずつ花が咲いて居ります。始めて蘇生《そせい》の思いをなして、
 町「あゝ辱《かたじ》けない、夢ではないか、それとも今までのが夢であったか知らん」
 と心を定めて四辺を見廻しますと、後《うしろ》の方に例の熊がジッと守って居りまする。
 町「まだお前は私を守護してくれるのか、人と見たら囓付《かみつ》くべき猛獣が、私の命を助けるとは此の上の恩誼《おんぎ》はない、辱けない/\、さア熊よ、お前はもう宜《よ》いから早く元の穴へお戻り、うか/\して居《お》ると猟人《かりゅうど》のために撃たれるぞよ、必ず/\お前の恩誼は忘れませぬ、早くお帰りなさい」
 と熊の頭《かしら》を撫で/\、「さア/\」と熊を後《うしろ》に向けて促しま
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