フでなく、天然の穴を用いたので有りまして、さながら井戸の如き切立《きった》て、深さも二三丈はありまして、其の穴からまた横に掘ったのでございます。熊は慣れて居りますから自由に出入《でいり》いたしますが、人間|殊《こと》に女子《じょし》の身では熊のように自在に飛上ったり飛下りたりする事が出来ませぬ。居《お》るともなしに此の穴の中で余程の日数《ひかず》を費《ついや》しました。熊は折々雪の塊《かたまり》を持って来ては児にも食《は》ませ、自分にも喰い、またお町の前へも持ってまいります。ところが段々その雪も解けて失《なくな》る時分になりますと、穴の隅からたら/\と清水が垂れてまいります。さア然《そ》うなると一日々々とだん/″\寒くなってまいりまして、もう穴の中に居耐《いたゝま》らぬ位になりました。獣類とは申しながら熊は誠に感心なもので、清水が滴《したゝ》るようになったので、熊の児を穴の途中まで出しました様子、お町の心配は何程か知れませぬ。さては神様が我身を見殺しにする思召《おぼしめし》か、情ないと思って居りますと、親熊が頻《しき》りにお町の前へ来て、後向《うしろむき》に脊中を出して居ります。お町も
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