ワせぬ、二つ持ってカチ/\叩いて居りますると、熊はむっくり起き上って、のそり/\とお町の前へまいりまして、その胡桃を取ろうとする様子でありますから、お町は震え上って、思わず持っていた胡桃を投出しました。熊は一向騒ぐ気色もなく、静かに其の胡桃を取上げて二つ三つ口へ入れましたが、忽《たちま》ちぽり/\と二つに割って、それを両手に乗せてお町の前に出しました。さては私に食べろということかと、そっと一つ取りまして熊の顔を見ながら食べました。又二つ三つと其の通りにして食べますると、熊も安心の様子にて我子の側にころりと寝転んで、児《こ》に乳を呑まして居ります。お町は漸《ようや》く胸を撫でおろして、
町「この猛獣までが私を助けてくれるか、あゝ有難い、これと云うのも日頃念ずる神様が此の熊に乗り移って我身を守護して下さるのでありましょう、此の上ともに首尾|好《よ》く穴を脱《ぬ》け出《い》で、夫文治殿に逢わして下さいますよう祈り奉ります」
と一心不乱に祈りまして、
町「どうしたら此の穴を出ることが出来るか知らぬ」
と足掛りのする処へ足を掛けて立上っては見ますが、前にも申す如く此の穴は熊が自身に掘った
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