A眼に遮《さえぎ》るは草木ばかりで人家のあるべき様《よう》もござりませぬ。
文「さては愈々《いよ/\》話に聞いていた無人島か」
と力なく樹を降り、根《こん》尽きて其の儘|其処《そこ》へ気絶いたしました。お話分れて、此方《こちら》は信州二居ヶ峰、中ノ峰の谷間《たにあい》の熊の穴に落ちましたお町が成行《なりゆき》でございます。前に申上げました通り、お町は隅の方に小さくなって居りますと、穴の外へ飛出した親熊が帰って、我子《わがこ》の寝て居ります側に蹲《うずく》まって居ります様子、お町は薄気味悪く、熊の正面に向いまして、人間に物いうように、
町「これお前、先刻《さっき》も申す通り私は決して悪人ではない、賊の為に災難に逢《お》うて逃げる機《はずみ》に此の穴へ落ちた者、其の時お前が追掛《おっか》けて出た彼《あ》の二人の者こそ泥坊じゃぞえ、私は仔細あって夫と共に此の山へ来かゝりしに、山賊共に欺《だま》されての此の災難、今頃夫は何処《いずこ》へまいられしか、定めし所々方々《しょ/\ほう/″\》とお尋ねであろう、どうぞ夫に逢うまでは不憫《ふびん》と思って助けて下さいよ」
と後《あと》へ退《さが》
前へ
次へ
全222ページ中145ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング