サうな模様はございませぬ。もとより用意の食事は無し、腹は減る、力は抜ける、進退こゝに谷《きわ》まって、どっかと尻を据《す》えまして、兎《と》やせん角《かく》やと思案に暮れて居りまする。
 文「最早十二月の中旬《なかば》、妻は何処《どこ》に何《ど》うしている事やら、定めし今頃は雪中に埋《うず》もれて死んだであろう、さなくば色里に売られて難儀をして居《お》るか、救いたきは山々なれども、此の身さえ儘ならぬ無人島の主《あるじ》、思えば我が身ほど不運な者はない、いや/\愚痴を溢《こぼ》すところでない、海上にて彼《あ》の難風《なんぷう》に出会い、幸《さいわい》に船は覆《くつがえ》りもせず、此の島に漂い着いたというのは……それのみか海賊の口から敵《かたき》の在処《ありか》の知れしは是ぞ神の助けであろう、あゝ無分別な事をしては第一神様に対しても相済まぬ」
 と心を取直して又々一里ほど行《ゆ》けども/\人の足跡さえござりませぬ。
 文「はて変だな、此の通り草木の生い立って居《お》る処を見ると、余程暖かい島に相違ない、何処にか人里があるであろう」
 と一番高い樹《き》に登って四辺《あたり》を見廻しましたが
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