閧ノ助けを得て、新潟沖の親船に賊窟《ぞくくつ》を構えたる敵《かたき》大伴蟠龍軒、秋田|穗庵《すいあん》の両人、やわか討たずに置くべきか、此の日本に神あらば武士たる者の一分《いちぶん》をお立てさせなされて下されまし」
 と其の夜一夜を祈り明かし、夜の白々《しら/\》と明くるを幸い、板子《いたご》を割《さ》いたる道具にて船を漕ぎ寄せようと致しますると、一二丁は遠浅で、水へ入れば腰のあたり、
 文「いよ/\神の助け給うか、有難し、辱《かたじけ》なし」
 と漸《ようよ》う陸《おか》へ上《あが》りまして、船を引上げ、二人《ににん》の死骸は人目にかゝらぬようにして、島の入口二三丁|往《ゆ》けども/\人家はなし、只荒れ果てたる草木《くさき》のみ、人の通りし跡だになければ、流石《さすが》の文治も暫《しば》し呆気《あっけ》に取られて、ぼんやり彼方《かなた》此方《こなた》を眺めて居りましたが、小首を捻《ひね》って、
 文「いや、これほどの島に人の上らぬ事はあるまい、何処《どこ》にか住居《すまい》があるに違いない」
 と心を励まして或《あるい》は上《あが》り或は下《くだ》り、彼是一里余も捜しましたが、人の居
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