「》宿屋を出る時に手強《てごわ》い奴と思ったかして、弁当の中へ毒を入れたのでござんしょう、それとも知らず自分の弁当は流してしまい、旦那の持って居なさる弁当箱には秋田屋の印《しるし》がござんすから、二日|二夜《ふたよ》さの飢《ひも》じさに浮《うっ》かり喰ったのが天道様《てんとうさま》の罰《ばち》でござんしょう、旦那、宥《ゆる》して下せえまし」
 文「成程、分った、新潟を出る時に怪しい奴と思わぬでもないが、それ程の奴とは心付かなんだ、そう貴様が懺悔《ざんげ》するからは其方《そち》の罪は宥して遣《つか》わす、さア今少し薬を呑んで助かれ、庄藏とやらはとても助からんぞ」
 吉「旦那ア、私《わっち》も最早《もう》いけません、眼が眩《くら》んで旦那の顔さえ見えなくなりました」
 文「これ、吉とやら宜《よ》く聞けよ、生前に何《ど》の様な悪事を働いても、臨終《いまわ》の際《きわ》に其の罪を懺悔すれば、慈悲深き神様は其方《そち》の未来を加護し給うぞ、さらりと悪心を去って静かに命数の尽《つき》るを待て」
 吉「あ、あ、有難うがす、私《わっち》も今更|発心《ほっしん》しました、死ぬる命は惜《おし》みませぬ、何
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