黷ホ助けてくれるは人情だ」
と云って居ります中《うち》に、風は漸《ようや》く凪《な》いでまいりました。
文「やア大分風が静かになって来た、これで天気になったらば、また助ける風も吹くであろう、死ぬも生きるも約束だ、各々《おの/\》確《しっ》かりしろよ」
船「有難うござりやす、旦那の方が気が丈夫だ、こうなっちゃア人間|業《わざ》で助かる訳にゃア往《い》かねえ、どうか旦那、神様を信心して下せえ」
文「そち達も信心が肝要だぞ」
吉「なアに此方《こち》とらア信心したって神様が……」
庄「やい何を云うんだ、確《しっ》かりしろよ、気が違ったか、心を改めて信心するが肝心だ、ねえ旦那」
文「そうとも/\、それ天気になった、風も止んだぞ」
庄「やア、こりゃア有難《ありがて》え、これと云うのも信心のお蔭だ、何《なん》しろあか[#「あか」に傍点]を掻かざアなるめえ」
吉「だって、あか[#「あか」に傍点]掻《かき》も何も流されてしまったじゃアねえか」
時に文治は、
文「よし/\、こゝに宜《よ》い物がある」
吉「へえ、宜い物って何《なん》ですか」
文「宿屋から持って来た弁当箱がある」
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