g「何処《どこ》に」
文「此の通り腰にぶら下げて居《お》る、飯も菜《さい》も沢山あるが、これを明けてから気長に掻い出そうじゃないか」
吉「旦那、飯をお棄てなせえますか、そりゃア勿体ねえ、これから何日食わずに居《い》るか知れやしねえ、旦那、勿体ねえじゃ有りませんか」
文「いや私《わし》は食べとうない」
吉「旦那、棄てるのなら私《わっち》に下せえまし、弁当も何も此の暴風《あらし》で残らず流してしまったア、旦那が上らねえなら私どもに下せえな」
文「いや/\これは食わぬ方が宜《よ》かろう」
両人「なアに勿体ねえ、少しぐらい汐《しお》が入っても此の場合だ、飯と聞いちゃア食わずには居《い》られねえ、何《ど》うか下せえな」
文「そんなら上げもしようが、中《あ》てられるなよ」
吉「大丈夫、さア庄《しょう》、あか[#「あか」に傍点]は後《あと》にして先ず二人で遣付《やっつ》けようじゃねえか、成程こいつア中々|旨《うめ》え」
と二人とも十箇《とお》ばかりの握飯《むすび》と菜《さい》まで残らず食《しょく》してしまいました。
二十九
吉「さア重箱が殻《から》になった、これから気長に
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