ェ、途中ではぐれて誠に心配して居ります、もしや貴方《あなた》がたは女を一人お見掛けなさいませんか」
 旅「へえ旦那様もお女中|連《づれ》かね、やっぱり女ア連れて逃げてござらしったのけえ」
 文「これは怪《け》しからぬ、連れと申すは私の女房でござります」
 旅「あゝ左様かね、その女あ泥坊に勾引《かどわか》されて新潟へ売られてしまいましたよ」
 文「さては貴方は其の女を御覧になりましたか」
 旅「知ってますとも、年の頃二十五六で……」
 文「左様々々」
 旅「江戸っ子で色の白い、好《い》い女でありやした、だん/\話を聞いたところが、今こそ斯様[#「斯様」は底本では「斯斯」と誤記]《こん》な零落《おちぶ》れているが、昔は侍の娘だと云って大変|溢《こぼ》していやした、余《あんま》り気の毒だから、私《わっちや》ア別に百文気張って来ました」
 文「それは何時《いつ》のことですか」
 旅「先月十日頃、新潟で遊んだ女です」
 文「いや、それは違います、私の申すのは昨日《きのう》のことです」
 旅「はゝあ昨日、また其様《そん》な事がありましたかね、何方《どっち》の方へ連れて行って何処《どこ》へ売ったので
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