アとで有りやすが、飯を炊きかけて居ります、少し有った飯はな、忰が皆猟に持って往ったでな、少しも無《ね》えだ」

  二十六

 この時文治は、
 文「御子息が猟師ならば、此の辺の山道《やまみち》は委《くわ》しく存じて居りましょうな、今から御子息を尋ねて往って、今一度此の辺を捜して見たいが、御子息は何方《どちら》の方へお出でか、分って居りましょうな」
 老「さアとても分りやせん、分ったにしたところで、この雪じゃアとても尋ねて往《ゆ》くことは出来ねえだ、雪解《ゆきと》けまで待たざアなりますめえ、幸いお女中が無事で居なさりゃア、此の辺に居る気遣《きづけえ》は無《ね》えね、越後か上州へ連れて往《い》かれたに違《ちげ》えねえだ」
 文「成程、それも尤《もっと》も、何《なん》しても腹が減って堪《たま》らない、飯が出来たら一飯《いっぱん》売ってはくれまいか」
 老「えゝ旦那様、麦飯ですが宜《よ》うござりやすかね、とても不味《まず》くって喰えるもんじゃア無《ね》えだ、それよりか此の先へ半里《はんみち》ほど往《ゆ》きやすと、三俣という町があって、宿屋もあるし飯もあるべえから、我慢して其処《そこ》まで往《
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