メらしい奴が二三人、往ったり来たりして居やした様子」
 文「その人体《にんてい》はどんな者でありました」
 老「なアに戸を締めて置きやしたから分りやせんが、また何か仕事をしやがったと思いました」
 文「その曲者は何方《どっち》へ往った様子ですか」
 老「いやそれは確《しか》と分りやせんが、多分|下手《しもて》の方へ往ったかと思いやした」
 文「然《しか》らば長岡か新潟辺かな」
 老「先《ま》ず六日町《むいかまち》から十六里、船に乗って長岡か新潟あたりへ持って往《ゆ》きましてな、それから着物は故買屋《けいずや》へ売り、女は女郎町へ売るそうだが、早くお殿様から手を廻して捕まえて下されば宜《よ》いが、時々取逃すので困るでがす」
 文「此の辺は矢張《やはり》榊原式部《さかきばらしきぶ》殿の領分でござろうな」
 老「いや此の辺はお代官|持《もち》で、公方様《くぼうさま》から沙汰が無《ね》えば手え入れられねえでがす」
 文「何《なん》と御無心だが飯はありますまいか、昨夜はまんじりともせず、食事も致さぬ故、如何《いか》にも空腹で堪《たま》らぬが、一飯《いっぱん》助けてくれまいか」
 老「へえ、お安い
前へ 次へ
全222ページ中121ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング