ォ夜の白々《しろ/″\》と明渡りまして、身体はがっかり腹は減る、如何《いかゞ》せばやとぼんやり立縮《たちすく》んで居りましたが、思い直して麓《ふもと》の方へ下《くだ》りました。二居ヶ峰の中の峰より二里半、三俣《みつまた》という処まで来ますると、宿《しゅく》はずれに少しばかり家はござりますが、いずれも門《かど》の戸を閉切《たてき》って焚火《たきび》をして居ります様子、文治はその家の前に立ちまして、
 文「もし/\、少々お願い申します、私は旅人でござるが、大雪に難儀を致します故、お助けを願います」
 と戸を叩きますと、内より一人の老人、
 「あゝ旅の衆か、この雪で御難渋なさるとは、そりゃ気の毒だ、さア明きますからお明けなせえ」
 文「はい、有難う存じます」
 老「やれ/\此のお寒いのに宜《よ》くお一人で峠をお越しなさいましたな、さア/\火の側へ其の儘お出でなせえまし、やア貴方はお武家様でござんすな、これは御無礼、御免下せえましよ」
 文「何《ど》うぞお構い下さるな」
 と炉端に両手を出したまゝ、暫く口もきけませぬ様子。
 文「当家には鉄砲が掛けてあるが、猟人《かりゅうど》ではござらぬか」

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