鼬Fよ、私は此の通りの扮装《なり》で居《お》るぞよ、夜《よ》が明けたら穴の様子を見て、どうぞして此の穴を出るゆえ、心あらば助けてくれよ」
と両手を合せて頼みました。
二十五
無心の熊もお町の言葉を聞分けしか、児《こ》を抱いたまゝころりと寝た様子でござります。お町は漸《ようや》く安堵《あんど》して、其の夜は神仏《しんぶつ》へ願《がん》掛けて、「八百万《やおよろず》の神々よ、何卒《なにとぞ》夫文治郎に逢《お》うて敵《かたき》を討つまで、此の命を全《まっと》うせしめ給わるように」と瞬《またゝ》きもせず夜《よ》の明くるまで祈って居りました。其の中《うち》に冬の夜《よ》の明方《あけがた》と見え、穴の口より少し日が映《さ》して居りますが、四辺《あたり》はまだ暗がりで未《ま》だ能く見えませぬ、まるで井戸の中へ這入ったようでござります。恐る/\四方を捜《さぐ》って見ましたが、少しも足掛りはなし、如何《いかゞ》せばやと胸騒ぎいたしましたが、余り騒いで熊が目を覚《さま》し、噛付かれてはならぬと思案に暮れて居ります中《うち》に、もう夜《よ》は明けたに相違ござりませんが、何処《どこ》から上ろうとい
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