竄ウ舁夫、知れたところが己《おれ》が追掛けて往って捕まえるという訳にも往《ゆ》かぬ、併《しか》し其方《そち》も素ッ裸で、嘸《さぞ》寒かろう、あの舁夫、其方も裸体《はだか》同様だが、今の駕籠の中に少しの包《つゝみ》があるから持って来てくれんか」
舁「私《わっち》も寒さが身に泌《し》みて、動けそうもござりやせん」
文「そうか、それじゃア気の毒だ、そんなら一寸《ちょっと》己が往って来よう」
半丁ばかりまいりましたが、駕籠は何処《どこ》に在《あ》るのか影も形も見えませぬ。
文「お町や、お町」
と呼べども一向|応《こた》えはありませぬ。
文「何処《どこ》へ駕籠を下《おろ》したのか知らん、あの舁夫に聞いたら分るだろう」
と気遣いながら元の処へ引返《ひっかえ》してまいりますと、何《いず》れへ行ったか旅人も舁夫も居りませぬ。
文「さては奴らは山賊の同類か、して遣《や》られるとは浅はかな、汝《おのれ》、この分には棄置かぬぞ」
と又取って返してお町の乗りました駕籠の跡を追掛けてまいりましたが、いくら往《ゆ》きましても姿が見えませぬ。それも其の筈道が違いますので、駕籠は五六間先へ下《おろ》
前へ
次へ
全222ページ中111ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング