齧{では「舁」と誤記]「おい舁夫、水はないか、そこらに水溜りがあるなら手拭を霑《しめ》して来い」
 舁「御覧の通り此処《こゝ》は山の上で、水は少しもありませんが、一体|何《ど》うしたんでしょう」
 文「知れた事、追剥《おいはぎ》よ、何《なん》とかして水を見付けてくれんか」
 舁「地蔵様の前に水がありますが、凍《こお》り切って居りやす」
 文「その氷を持って来い」
 文治は懐中より薬を取出し、旅人の口へ入れて氷を含ませ、
 文「旅人々々」
 と呼ばれて漸《ようや》く気が付きました。
 旅「ウ、ウ、ウーム」
 文「旅人、気が付いたか、確《しっ》かりしろ」
 旅「有難う存じます」
 文「定めし山賊の仕業であろうな」
 旅「ウヽヽヽウ、おゝ苦しい」
 文「金子も衣類も取られたか」
 旅「皆取られてしまいました、今しがた二三の山賊が其処《そこ》らに居りました」
 文「山中とは申しながら、日中《にっちゅう》旅人の衣類金銭を剥《は》ぐとは恐ろしい奴だなア」
 旅「私《わっち》もこんな目に遇《あ》おうとは夢にも思いませんでした」
 舁「これ旅人、その追剥は何方《どっち》へ逃げたか知らねえか」
 文「い
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